まず、ショー開幕前に発表されていたロールス・ロイス・ファントム "セレ二ティ"は、特注製作を行う同社のビスポーク部門が製作した和風な内外装で注目を集めました。特に後席部分には着物に使われるシルクをふんだんに使い、ルーフからドアまで桜の木をあしらっています。同社では全世界で販売された車両の実に85%にビスポークが施されているとのこと。クルマで日本文化を再現したこのロールス・ロイスは、日本人にとっても誇り高い存在です。
ベントレーが突如発表したコンセプトモデルの「EXP 10 Speed 6」は、まさに衝撃的なデビューでした。現行のコンチネンタルGTよりもコンパクトな2シータークーペのダイナミックなデザインは多くの人々を魅了していました。
リアにはトランクがなく、ガラスハッチを開いてラゲッジルームにアクセスする方式も同社としては異例です。実はこのモデルには豪華なカタログが用意されていて、オーナーらしいVIPな上得意客は展示エリアに優先的に通され、さりげなくカタログが手渡されていました。まったく羨ましい限りです。
今回もっとも度肝を抜かれたメーカーがアストンマーティン。同社は毎年ジュネーブで新型車をお披露目していますが、今回は様相が違いました。会場に展示された新型車は、サーキット専用モデルの「ヴァルカン」、GT3競技車両のロードゴーイングモデルといえる「ヴァンテージGT3スペシャルエディション」、クロスオーバーSUVのようなラグジュアリーGTの「DBXコンセプト」、さらに2014年に発表された4ドアモデルの「ラゴンダ・タラフ」まで展示されていたからです。アストンマーティンが一気にこれだけの新型車を発表・展示するのは例がないため驚愕しました。
アストンマーティンが発表したサーキット専用モデルの「ヴァルカン」は、24台の限定生産。一方、マクラーレンのブースに展示されていたサーキット専用モデルの「P1 GTR」は、P1を注文したオーナーのみ購入できるモデルです。公道を走行できないサーキット専用モデルは、フェラーリFXXにはじまり、パガーニ・ゾンダRおよびゾンダRevolucion、ランボルギーニ・セストエレメントを経て、ついに英国ブランドにも飛び火。今後、このような富裕層専用モデルが定着していくのでしょうか。
アストンマーティンの新作のなかでもっとも興味を惹いたのが「ラゴンダ・タラフ」です。ウィリアムズ・タウンズが設計し、1976年に登場した「ラゴンダ」のオマージュ的作品ともいえるこのモデルは、当初は中東向けといわれていました。今年2月末に中東以外の地域への販売と右ハンドル仕様の製作をアナウンスしたことから、ジュネーブにも展示されることになったようです。資料を見ると、追加された販売地域に日本の文字がなく、残念ながら日本への上陸はないかも知れません。
実車の印象は、旧ラゴンダのような極度にエッジの立ったデザインではないものの、ボディの長さが印象的で只者でない強烈なオーラが漂っています。気になるリアの居住性は、実際に座ってみると4ドアのラピードSのような囲まれ感はなく、ゆったりくつろげるものでした。また、リアエンターテインメントシステムは着脱可能なタブレット式となっていたのも意外な発見でした。
英国のKahn Designが出品した"Huntsman Concept"は、ランドローバー・ディフェンダーをベースにした6×6のコンセプトモデル。ノーズは400mm長く、リアキャビンを1,000mm延長したこのモデルは、430馬力のGM製6.2L V8エンジンを搭載しています。一見して分かるようにメルセデス・ベンツG 63 AMG 6×6に触発されて製作したのは明らかで、カタログにはG 63 AMG 6×6と同様の4ドアピックアップ仕様も掲載されていました。
ランドローバーのブースには3種類の個性的なディフェンダーが展示されていました。これらは限定モデルの「ヘリテージ」「アドベンチャー」「オートバイオグラフィー」で、2015年末で英国での生産を終了するディフェンダーの実質的な最終モデルです。
なかでも、個人的にはプリプロダクションモデルの"HUE 166"をイメージしたヘリテージ・エディションに強く惹かれました。グラスミア・グリーン・メタリックのボディカラーとアラスカ・ホワイトのルーフカラーの組み合わせが絶妙で、様々な特別装備がコレクターズアイテムとしての価値を高めています。ボディは写真の90と110が設定され、今年8月から発売予定。67年にわたる歴史の締めくくりに相応しいモデルといえるでしょう。